武力についてのメモ 2

具体構成[編集]

軍隊
最も直接的な軍事力の貢献者である。陸上の地域を確保する陸軍海上交通路を確保する海軍、空域を確保する空軍弾道ミサイルを運用する戦略軍などが軍隊の構成要素である。また近年、テロによる連続した攻撃や、民族紛争、遊撃戦やその鎮圧などの非対称戦争や迅速な通常戦力の投入による限定戦争が増加しており、各国がそれらに対抗するために特殊部隊の必要性を自覚し、創設・育成に力を入れている。また各国は予備役を比較的に財政を圧迫しない予備の兵力として維持している。これは戦時における消耗の回復、民間の優秀な技術の確保、戦時に新戦力を新しく編成する基礎として重要である。
準軍事組織
主に国内における内乱を抑え、治安を維持するため、または国境を防衛するための副次的な軍事力として考えられている。具体的な例としてあげられるのは米国沿岸警備隊ソ連国家保安委員会スイスの民間防衛隊などの国境警備隊警察組織、ミリシアである。歴史的に見れば正規軍の歩兵部隊が準軍事組織の警察に必要に応じて編入されることがあった。また軍隊警察の任務を一元化した警察軍として確立している国が存在する。これらの組織は戦時にあたってはしばしば軍隊の一部として組織され、運用される。
戦略(戦争指導)
軍事力の造成や運用の効率性や妥当性に大きく影響する。軍事行動にかかわる事柄は決して軍事だけではなく、外交経済戦時体制民間防衛など幅広い。これらさまざまな方面の政策に整合性を持たせ、効率的に機能させることは戦時における実質的な軍事力に大きくかかわる。現代における戦略にはいくつかのレベルがある。政治経済外交文化宗教などを政府が総合的に考慮したものを国家戦略とし、この下部にあるものが軍事戦略である。この軍事戦略において、抑止力の維持や有事のための部隊の運用法を策定し、準備する。この戦略が合理的に確立されていれば、軍事力に関わるさまざまな決断を一定の方向性と迅速性を持って決定することができ、また準備面における一貫性も維持することができる。なお、戦略という用語そのものには、時代や地域によって考え方や定義が異なるので注意を要する。
指揮統制システム
軍事力の神経とも言うべき国、あるいは軍隊情報システムである。指揮統制システムとは情報収集によって得た情報を速やかに伝達し、その情報を適切に処理分析した上で上層部が判断し、その命令が滞りなく下部組織に伝達されるまでの一連のシステムを指す。具体的には早期警戒衛星などの人工衛星防空のためのレーダー施設などの、目にあたる部分、前線部隊などが装備する通信機器による神経にあたる部分が指揮統制システムを支えている。このシステムの精度によって上層部と末端の連携や、制御などの要素が左右される。近年、コンピュータの技術の発展が著しく、米軍などの再編計画に見られるようにこの分野の変革が大きく進んでいる。米軍はこれをC4ISRと表現し、その改革に重点を置いている。具体的にはCommand(指揮),Control(統制),Communication(通信),Computing(コンピューター),Intelligence(情報),Surveillance(監視),Reconaissancce(偵察)の7項目に関する改革である。こうした指揮統制システムに欠陥があれば、戦時での部隊の運用や現状把握において大きな不利益を被ることとなる。
大量破壊兵器
その威力から戦略的な意味で特別な軍事力として扱われる。特に核兵器の破壊(殺戮)能力は通常の軍事力を凌駕するものの、核戦争を誘発する可能性があるため、運用は制限的なものになる傾向が強く、故に大量破壊兵器抑止力という概念的な軍事力として考えられている。しかし近年、米国戦術核兵器の研究を進めており、将来的には新しい大量破壊兵器が登場する可能性もある。また、核兵器に限らず、生物兵器化学兵器大量破壊兵器の範疇に入る。とくにこうした生物兵器化学兵器は製造も容易で、貧者の核兵器と呼ばれることがある。総称としてNBC兵器という言い方をすることもある。
情報機関
情報面における二次的な軍事力の構成要素である。情報機関が行う諜報活動、例えばシギントヒューミントイミントオシントなどから得られた情報は分析を通じて国家による意思決定をより的確なものにし、軍事外交などの戦略策定においてその効率を大きく引き上げる。また、偵察諜報によってえられた情報を迅速に部隊に伝達することで、効率的な部隊運用も可能にする。とくに戦時における機密保持、防諜は、国家での意思決定の漏洩防止をはじめ、現地部隊での戦術立案にも関わる重要事項である。太平洋戦争における米軍は日本の外交用暗号や、旧日本海軍の暗号など各種の暗号解読することに成功したことによって、外交交渉において日本側の内部事情を知ることができ、また作戦立案時に理論上適当な戦力を戦場に投入することが可能であった。
後方支援兵站
あらゆる軍事活動を支える非常に重要な要素であり、軍隊の戦闘力の基幹と言える。大部隊であればあるほど、また部隊が機械化されていればいるほど、前線で必要となる物資は種類、数量ともに増加するので、国家間の戦争においては兵站の優劣がその勝敗までをも非常に大きく左右する。とくに、戦争に参加する国家などの策源から遠く離れた地域での戦争においては非常に大きな意味を持つ。それに加え、戦争において必要な兵站の規模によってはその国家の経済財政に大きな変化をもたらす。軍需産業は軍が活動で消費する膨大な弾薬や食料、燃料やスペア部品などを受注する。一方で財政はその受注の支払いを強いられることで、しばしば巨大な負担を負うことがある。とくに大規模の兵力を、国家から相当に離隔した地域に投入し、戦争をおこなうときは兵站が大規模にならざるをえない。なお、国によっては通信をはじめとした各種後方連絡線の機能もふくめて兵站(Logistics)と呼ぶことがある。
技術力(軍事技術
軍事力の構成要素である軍隊の兵器の発展に非常に大きく貢献し、兵器の能力は陸軍の機械化歩兵の車両や戦車火砲をはじめ、空軍海軍の主要正面装備の能力、ひいては兵士個人の生存率に大きく影響する。特に兵器への依存性が強い海軍空軍においては高性能な兵器開発がその能力を大きく左右し、電子戦ミサイル戦などにおいては兵器の能力が勝敗に大きく影響する。とくに戦略部隊の保有する各種弾道ミサイル、あるいはその軍事技術は全面的に科学や技術に依存している。米国ではこの軍事力の一部としての技術力を認識しており、国家的な技術開発を推し進めている。