武力メモ イスラエルの近接格闘術のトレーニング方法

基本理念
クラヴ・マガにおいては、柔道や空手などのように競技規則が確立されているスポーツ格技ではないため、試合として大会が行われることはない。むしろ、実生活で起こりうる状況で効率的に動けることに重点を置いている。また一般的に、学習者にとって不利な状況を想定しており、股間への攻撃、頭突きなど、相手に対して効率的なダメージを与えることを念頭においている。

クラヴ・マガのテクニックにおける基本行動理念は、

脅威の排除
怪我の防止
防御から攻撃への素早い転換
反射神経の利用
ダメージを受けやすい部分を狙うこと
近くにある道具や物体の利用
である。

基本的には、相手の最初の攻撃に対処し、次の攻撃を予防し、そして相手を制圧することを、緊迫した状況下で正確に行うことである。中でも、攻撃を仕掛ける相手から、いかに早く主導権を奪うかということが最も重要視されている。

ベルトシステム・レベル[2]
クラヴ・マガは(実際に帯の受用や着用があるわけではないが)ベルトシステムという柔道における帯のようなシステムを持ち、併行してレベルというシステムも持つ。

最も初級であるレベル1では主に基本的な構えや打撃テクニックを学ぶことができ、次いでイエローベルトに昇級するとレベル2となり、より多くのパンチ・キック技術や抱きつきに対する護身等を学ぶことができ、ブルー・ブラウン・ブラックベルトの保持者が対象となる最も高度なレベル5では武器に対する護身や第三者の護身等の高度な技術を学べる。

昇級は規定の出席数を越えることで生ずる受験資格によるテストに合格することでできるが、テストに参加せず同一のベルトに留まることもできる。

テクニック
クラヴ・マガは、人間が本能的にもっている条件反射を動きに取り入れており、いざという時に、身体が自然に護身の動きとして反応するという特徴を持っている。その首尾一貫した合理的な考え方により、短期間の訓練で性別、年齢、体格、体力を問わず、誰でも高いレベルの護身スキルの取得を可能とするとされている。

サバットやキックボクシング(蹴り、パンチの技術)また柔術レスリング(身のこなしの技術)などから取り入れた技法を持っているが訓練法は異なっており、自分が不利な状況での護身を重要視している。実戦を徹底的に意識しており、敵は必ずしも素手ではなく、ナイフや拳銃などの凶器を保持しているケースも想定して訓練を実施している。また、敵が一人とも限らないため、複数の相手を想定した訓練も実施している。

訓練はエアロビクスと、敵に見立てたパッドを多用するのが特色である。これにより、訓練を受ける者は手加減なしで反撃の練習が可能だし、パッドを保持する側もクラヴ・マガの効果を、反撃される者の立場で体感することができる。そのため、パッドを保持する者も、攻撃を加える者と同じくらい激しい運動をしたことになるという。

人間は不意に襲われたときはパニック状態に陥り、思考能力が急激に低下するため、訓練においては、ラウドスピーカー、ストロボスコープ、霧発生器といった装置を導入し、生徒が周囲の状況に余計に迷わされず、敵にダメージを与えることに集中するよう指導することもある。また身体や言葉を使い、実力行使をせざるを得ない状況に入ることを防ぐ方法が教えられることもある。

一般的なクラヴ・マガのトレーニングセンターでは、訓練は約1時間で、エアロビクスと護身術を組み合わせた指導が行われるが、難度が上がるにつれ次第にエアロビクスよりも護身法に重点が移される。まず、指導員は心拍数を上げるための激しい運動を行わせる。そしてストレッチを行った後、いくつかの護身法が教えられる。この中では、まず相手にダメージを与える方法(パンチ、蹴りなど)または身のこなしの技術(相手の制圧下からの抜け出し方など)が指導され、その後にこれらの技術とエアロビクスを組み合わせた指導がされる。最後に、生徒をバーンアウトさせて終了するが、これは訓練の最初に実施されることもある。

 

www.kravmaga.co.jp